古本を買いにいつもの書店にいくと、
入り口に12月31日をもって閉店する旨の張り紙があった。
思わず、
この店の地の利の悪さやこの町の人口急減のニュースや
うなだれているだろう店員たちの顔が脳裏をよぎった。
店の中はきっと重い空気が充満しているであろう
と想像しながら足を踏み入れると、
さっきの杞憂とは裏腹に、
そこには、いつもと同じ雰囲気で、
いつもと同じ声で、
今日も元気に商売をしている人々の姿があった。
少し遠い場所にいた店長の顔も
何かが吹っ切れたような表情に見えた。
閉店という事実を真っ向から受けとめて、
店長として「自分の手で」
「この店を閉めなければならない」
という役目のつらさを、
この人は、きっとどこかで呑み込んできたに違いない。
ぼくは軽く深呼吸しながら、
拳をぎゅっと握って、
厳粛な気持ちで、奥にある書棚に向かった。